
外航貨物海上保険の基礎知識
国際物流の世界に足を踏み入れたばかりの方にとって、外航貨物海上保険は複雑で分かりにくいと思われる分野かもしれません。しかし、この保険は、国際貿易において商取引を円滑にする重要な役割を果たしています。 この記事では、外航貨物海上保険の概要と実務上の注意点を、解説します。
目次[非表示]
- 1.外航貨物海上保険とは
- 2.保険加入の必要性
- 3.約款(ICCとは何か?)
- 3.1.①ICCの3つのタイプ
- 3.2.②免責事項
- 4.保険料(率)の算出
- 5.求償の流れ
- 6.保険加入の際の注意点
- 7.まとめ
- 8.航空貨物の輸送は『OCS』がおすすめ!
外航貨物海上保険とは
外航貨物海上保険(Marine Insurance)は、損害保険の一種で、国際輸送中の貨物に生じる損害をリスクヘッジします。「海上」とついていますが、海上輸送だけでなく、航空輸送や陸上輸送を含む複合一貫輸送全体もカバーできる内容となっています。
💡主な特徴
✔国際性: 世界で通用する国際的な保険制度
✔包括性: 輸送中の様々なリスクをカバー
✔柔軟性: 保険会社と調整し、貨物の種類や輸送方法に応じてカスタマイズが可能
保険加入の必要性
国際物流には下記のような様々なリスクが伴います。これらのリスクによる損害から自社の貨物を守るために、外航貨物海上保険は欠かせないツールです。
・自然災害 - 嵐・台風・地震などによる損害
・事故 - 船舶の衝突・転覆・火災
・盗難・紛失 - 輸送中や港での貨物の盗難や紛失
・湿気・水濡れ - 海水や雨水による貨物の損傷
・輸送遅延 - 特定のケースにおける輸送遅延による損害
約款(ICCとは何か?)
「どのようなリスクがカバーされるのか」を定めた保険のルールブックである約款。外航貨物海上保険は「輸送リスク」を担保しますが、このリスクは「海上危険」「戦争危険」「ストライキ等危険」と大きく3つに分類されており、それぞれ対応する約款があります。
世界中の海上保険取引で広く使用されている国際的な基準となっているのが、ロンドン国際保険引受協会が制定している協会貨物約款のInstitute Cargo Clauses(通称:ICC)です。戦争危険・ストライキ等危険はICCにセットされる協会戦争約款(Institute War Clauses)、協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses)に従って、補償されます。
①ICCの3つのタイプ
ICCには主に3つのタイプがあり、損害のカバー範囲の広さによって分かれています。精密機器や高付加価値商品の輸送が多い航空輸送では、オールリスクのICC(Air)で加入するケースがほとんどです。
1. ICC 【A】(Air)
特徴: オールリスク型の条件で、外来的・偶発的な事故による貨物の損害を包括的にカバーします。航空輸送でA条件を希望する場合は、共同海損のリスクを除いたICC(Air)が適用されます。最も保険料が高い条件です。
対象リスク: 海難事故、自然災害、火災、爆発、盗難、荷扱い不注意など
2. ICC 【B】
特徴: 特定の危険による損害のみをカバーします。A条件より保険料は安くなりますが、カバー範囲も限定的になります。
対象リスク: 船舶の座礁・沈没・火災、地震・火山噴火、梱包ごと海に流される場合、共同海損犠牲、荷揚げ中の落下による全包装の滅失など
3.ICC 【C】
特徴: 最も基本的な補償で、主要な海上危険のみをカバーします。最も保険料が安く、損害が出にくい原材料など価値の低い貨物や、損傷に強い貨物の輸送に適しています。
対象リスク: 船舶の座礁・沈没・火災、地震・火山噴火、梱包ごと海に流される場合、共同海損犠牲など、B条件よりさらに限定されたリスクのみ
②免責事項
どのICC条件でも、以下のようなリスクは基本的に補償されないので、注意が必要です。
- 被保険者の故意による損害
- 通常の漏損、重量・容積の通常の減少
- 梱包の不十分・不適切による損害
- 貨物固有の瑕疵または性質による損害
- 遅延による損害(保険でカバーされる遅延によって生じた損害は除く)
- 船主・用船者・運航者の支払不能または財政上の債務不履行による損害
- 原子力危険、生物化学兵器等危険
- 通常の輸送過程以外のテロ危険
保険料(率)の算出
外航海上保険の保険料(率)は以下の要素などにより決定されます。
- 貨物の種類・性質・状態 - 壊れやすい(例:精密機械)・傷みやすい(例:要冷蔵冷凍品)内容品かどうか
- 荷姿・梱包・積付状態 - 破損などのダメージを防ぐ適切な梱包がなされているか
- 輸送経路と手段 - 政情不安などリスクの高い地域への輸送か
- 保険金額 - 一般的にCIF価格(商品価格+保険料+運賃)の110%
- 担保条件 - オールリスクの場合は他の条件より保険料が高い
求償の流れ
貨物に損害が発生していた場合の基本的な手続きの流れは下記の通りです。
- 損害の発見 - 荷受け時に貨物をよく検査
- 保険会社へ事故通知 - 保険会社に事故が発生した旨を連絡。必要に応じて、サーベイヤー(損害検査人)を派遣してもらう
- 必要書類の準備 - Air Waybill・インボイス・保険証券・損害状況報告書など
- 保険金請求 - 保険会社に必要書類を提出し、保険金を請求
保険加入の際の注意点
1. インコタームズと保険手配
外航貨物海上保険を日本・海外のどちらで手配するかは、輸出者・輸入者の間で締結される売買契約の取引条件(一般的にはインコタームズ)によって決まります。どちらで保険を手配するのかを簡単にまとめると、下記表になります。
【インコタームズ 一例】〇:日本で保険を手配する場合、✕:相手国で保険を手配する場合
輸出 |
輸入 |
|
CIF・CIP |
〇 |
✕ |
CFR・CPT |
✕ |
〇 |
FOB・FCA |
✕ |
〇 |
2.梱包の重要性
適切な梱包は損害の予防に最も効果的です。また加入の際に、保険会社から荷姿を確認される場合もあり、保険料の低減にもつながります。輸送方法や貨物特性に合った梱包を心がけましょう。
まとめ
外航貨物海上保険は国際物流における重要なリスクヘッジの手段です。貨物の種類・輸送経路・相手との取引条件などに応じて、適切な保険加入をすることで、安心して海外とのビジネスを進めることができます。保険加入を検討する際は、必ず重要事項説明書を読みましょう。その上で、不明点や心配事があれば、保険会社に相談することをお勧めします。
航空貨物の輸送は『OCS』がおすすめ!
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